語り継ぎたい古典サイレント映画 Vol.11  



 

第 七 天 国 』 (7th Heaven)

 1922年にニューヨークで上演されたオースティン・ストロングの戯曲をベンジャミン・グレイザーが脚色し、『歴史は夜作られる』等の作品で知られるフランク・ボーゼイジが監督した究極の恋愛映画。この年からアメリカで始まった第一回アカデミー賞の監督賞、女優賞=ジャネット・ゲイナー(『サンライズ』『街の天使』を併せた3作品の演技に対して)、脚本賞を受賞。日本でもキネマ旬報ベストテンの第一位に選出されており、世界中で絶賛され大ヒットした作品である。当時のキネマ旬報には「これはウィリアム・フォックスが今迄に製作したる最良の映画なるのみならず、実に映画界始まって以来の、最良映画の一つである。如何なる形容詞を用いて讃めても、讃め過ぎる事は無いであろう。(略)この映画を見て感激しない人は恐らくあるまい」との批評が掲載されている。
 1階から7階までの階段をずっと移動で追っていくカメラワークやソフトフォーカスを効果的に取り入れるなど随所に冴えを見せたボーゼイジ監督の演出と、ユーモアを織り交ぜながら物語を発展させていくグレイザーの脚本とが見事に融合し、他愛ない恋愛劇を〈至上至高の大芸術作品〉と言わしめるほどの名作に仕立て上げている。そして何よりもジャネット・ゲイナー、チャールズ・ファレルという清純な印象を湛えた二人の主演俳優が、この映画の成功に大きく寄与していることは言うまでもないだろう。


 チコはパリの下水道清掃人。独身で、友達と云えば同僚のラットと、ポンコツの愛車を「エロイーズ」と名付けているタクシー運転手のブールだけである。チコは下水道清掃人から出世して、太陽の光を浴びて働ける道路清掃人になれることを願っている。だが、神に祈っても中々叶わないので、彼は無神論者になっていた。それでも誇りと希望だけは失わず、貧しいアパートの7階にある屋根裏部屋の自宅も彼には星にとっても近い天国だった。そう、チコはこの部屋を「第七天国」と呼んでいる。
 ある日、下水道の入口から顔を出したチコが目にしたのは、姉のナナから虐待されているディアンヌの姿であった。帰る家を失ったディアンヌは警官に取り調べを受けるが、機転を利かせたチコが自分の妻だと言い張り、彼女を自宅へと連れて帰った。
 ベッドをディアンヌに譲って眠りについたチコは、翌朝、コーヒーの香りで目を覚ます。二人一緒の朝食。いつしか二人には新たな感情が芽生えて行くのだった。
 チコはこの部屋から向かいの建物まで板子1枚を渡して往き来している。向かいには道路清掃人のゴバンと彼の身重の奥さんが住んでいた。
 「下を見ちゃいけない。いつも上を見て! 上を見ていれば怖くない」
 念願が叶ってチコが道路清掃人に昇格し、ディアンヌが板を渡って向かいの建物へ行くことが出来た時、戦争が始まった。
 チコとディアンヌは二人だけの結婚式を挙げる。そして、「何処にいても毎日午前11時に君に会いにやって来る」と言い残し、チコは出征して行くのだった…。
 

                             
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